この記事でわかること
- 社員から休職を申し出られたときに会社がやるべき手順
- 休職中に会社側で管理すべきこと(給与・社会保険・連絡方法)
- 復職に向けた準備と産業医の役割
結論
社員が休職を申し出たとき、会社側で最初にすべきことは就業規則の休職規定を確認することです。
休職の開始時期・期間・給与の扱い・復職の条件は、就業規則の規定によって決まります。規定がない、または曖昧な場合、後のトラブルにつながります。規定を整備しておくことが、会社側のリスク管理の基本です。
休職に関する法律上の位置づけ
休職制度は、法令で義務付けられたものではなく、就業規則によって定められる会社独自のルールです。ただし、業務外の傷病を理由に欠勤が続いた場合の対応(休職命令)については、解雇に代わる措置として多くの企業で規定されています。
精神疾患・メンタル不調を理由とした休職が増加しており、適切な手続きを踏まずに解雇した場合には、不当解雇として争われるリスクがあります。休職手続きを適切に進めることが会社側の保護にもなります。
休職手続きの流れ
ステップ1:主治医の診断書を受け取る
休職の申し出があった場合、まず主治医の診断書の提出を求めます。診断書には以下の内容が記載されていることが望ましいです。
- 診断名(傷病名)
- 休養の必要性
- 推奨される休養期間
診断書の記載内容だけで判断が難しい場合は、産業医に相談してください。
ステップ2:産業医面談を実施する(必要に応じて)
主治医の診断書を受け取ったら、産業医に状況を共有し、面談の要否を相談します。
産業医は、主治医の判断・本人の状況・職場環境を総合的に勘案して、就業上の意見(休職が適切かどうか)を会社に提供します。
なお、産業医面談は本人の同意を得た上で実施します。
ステップ3:休職通知書を発行する
会社として休職を認める場合、書面で休職開始日・休職期間・復職条件・期間延長の可否などを本人に通知します。
口頭だけで済ませると、「何月何日から休職になったか」「給与はどうなるか」について後から認識の齟齬が生じることがあります。必ず書面で残してください。
ステップ4:給与・社会保険の手続き
給与について
就業規則の規定によります。無給休職・有給休職(一定期間給与を支払う)・傷病手当金の手続きサポートをするかどうかを確認してください。
傷病手当金(健康保険)
業務外の傷病で休業し、報酬が支払われない場合、健康保険から傷病手当金が支給されます(健康保険法第99条)。支給額は標準報酬日額の3分の2、支給期間は最大1年6か月です。
申請には事業主の証明が必要です。本人・主治医・事業主それぞれが記載する書類を準備します。
社会保険料について
休職中も社会保険(健康保険・厚生年金)の被保険者資格は継続します。保険料は本人負担分も発生します。無給休職の場合、本人負担分を会社が立て替えて後日精算するか、口座引き落としで支払ってもらう方法を確認してください。
ステップ5:休職中の連絡方法を決める
休職中に会社側が本人に連絡する機会を作ることは必要ですが、頻繁な連絡は回復の妨げになります。
なお、主治医や産業医から「療養に集中させるため、会社からの連絡を最小限にしてほしい」という意見が出る場合があります。その場合は、連絡できる人を人事担当者1名に限定するなど、窓口を絞った上で最低限の連絡に留めてください。
一般的な目安:
| 連絡頻度 | 推奨される場面 |
|---|---|
| 月1回程度 | 回復期・長期休職(1か月以上) |
| 2週間に1回程度 | 休職開始直後の短期期間 |
連絡の目的は「書類手続きの確認」「復帰に向けた状況確認」に限定し、業務に関する内容を問い合わせることは避けてください。
会社側の休職対応チェック項目
休職の開始から復職準備までに、以下を確認してください。
書類・通知
- 主治医の診断書を受け取った
- 休職開始日・休職期間・復職条件を書面で本人に通知した
- 就業規則の休職規定(給与の扱い・期間満了時の取り扱い)を本人に説明した
給与・社会保険
- 傷病手当金の申請手続きを案内した
- 休職中の社会保険料の支払い方法(口座引き落とし・立替精算など)を取り決めた
連絡・体制
- 産業医に状況を共有した
- 休職中の連絡方法・連絡頻度・窓口担当者を本人と取り決めた
- 代替業務・担当引き継ぎを完了した
復職準備
- 復職条件(主治医の復職可能診断書・産業医面談)を明示した
- 復職支援プログラムの有無を確認し、ある場合は本人に案内した
復職に向けた準備
復職の判断は「主治医が復職可能と判断した」だけでは不十分です。以下のプロセスを経ることを推奨します。
- 本人から主治医の復職可能診断書を受け取る
- 産業医と復職面談を実施する(職場環境・業務負荷・本人の状態を確認)
- 産業医から就業上の意見を受け取る(制限付き復職・段階的復帰など)
- 上司・人事で復職後の業務配置・サポート体制を検討する
- 復職日・業務内容・勤務時間を書面で通知する
産業医の意見は「段階的に復帰する」「最初の1か月は残業なし」「対人業務は当面外す」など、具体的な内容が含まれることがあります。この意見を無視して通常業務に戻すと、再発・再休職につながるリスクが高まります。
復職判断で確認すべき「環境調整の可否」
復職を判断する際、「主治医が復職可と言っているから戻す」だけでなく、企業側として何ができれば復職可能かを事前に整理しておくことが重要です。
- 業務量の軽減・残業の制限は可能か
- 特定の担当業務・人間関係の調整はできるか
- 在宅勤務・時差出勤などの勤務形態の変更は対応できるか
これらを整理した上で産業医と面談することで、「この条件で復帰できるかどうか」という具体的な判断がしやすくなります。
事業の特性上、特定の配慮が難しい場合もあります。企業として提供できる環境に限りがある場合は、本人の病状・キャリア観・今後の働き方の希望も踏まえて、率直に話し合う機会を設けることも必要です。無理に現職に戻すことが本人にとっても企業にとっても最善でない場合は、選択肢を広げた対話が解決につながることがあります。
FAQ
Q. 就業規則に休職規定がない場合はどうすればよいですか? 就業規則に休職規定がない場合、休職に関する取り決めは個別契約・協議によることになります。現状で規定がない場合は、今後のリスク管理のために社労士に相談の上、就業規則に明記することを強くおすすめします。
Q. 休職期間満了後も復職できない場合はどうなりますか? 就業規則の規定によりますが、多くの場合「休職期間満了後に復職できない場合は自動退職または解雇」という規定が設けられています。ただし、この手続きは慎重に進める必要があり、産業医・社労士・法務担当者と連携した対応が必要です。
Q. 社員が休職を拒否している場合でも会社から休職を命じることはできますか? 業務遂行に支障をきたす状態が客観的に認められる場合、就業規則に休職命令の規定があれば、会社から休職を命じることができます。ただし、手続き・根拠・本人への説明を丁寧に行う必要があります。産業医の意見書を取得した上で進めることを推奨します。
まとめ
休職手続きは、書面・産業医意見・就業規則の三つを組み合わせて進めることが基本です。口頭・曖昧な取り決めで進めると、後の復職・退職場面でトラブルになるリスクがあります。
今すぐできること:
- 自社の就業規則の休職規定(期間・給与・復職条件)を確認する
- 産業医との連携フロー(誰がいつ産業医に連絡するか)を明確にする
- 傷病手当金の申請書類の準備方法を確認しておく
アンカー産業医事務所では、休職・復職面談の実施、就業上の意見書作成、復職支援プログラムへの関与まで対応しています。京都・大阪・滋賀・奈良・兵庫での対応が可能です。
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